新型コロナウィルスの治療薬としては、その候補がいくつかありますが、その中の一つ「レムデシビル」が日本で5月7日に特例承認されました。
とはいえ、レムデシビルの効果が確証されているわけではありません。
しかも、その副作用が懸念材料となっています。
しかし、過酷な環境の医療現場では、レムデシビルの効果に、藁にもすがる思いなのではないでしょうか。
そこで今回は、レムデシビルの効果や副作用、作用機序、その供給量などについて調べていきたいと思います。
レムデシビルとは?
レムデシビル(商品名:ベクルリー)は、抗ウィルス薬の開発で有名な「ギリアド・サイエンシズ」というアメリカの製薬会社で作られています。
レムデシビルはもともと、最大の致死率が70%を超えるエボラ出血熱の治療薬として開発されました。
まだ研究開発段階の治療薬でしたが、コンゴ民主共和国で臨床試験が行われていました。
ところが、その臨床試験では、効果的な結果を得られなかったようです。
しかし、その後も様々なウィルスに対する治療薬として、研究が進められていきました。
そして、今回の新型コロナウィルスの流行に伴い、レムデシビルにも注目が集まるようになります。
レムデシビルの作用機序
エボラ出血熱はエボラウィルスが体内に侵入し、増殖することで様々な症状を引き起こします。
RNAウィルスであるエボラウィルスは、遺伝情報であるRNAを複製することにより増殖していきます。
レムデシビルはRNAウィルスの複製を阻害することにより、RNAウィルスの増殖を抑える効果があります。
新型コロナウィルスもRNAウィルスであり、同様の作用機序から、新型コロナウィルスの治療薬として期待され、研究が進められました。
つまり、レムデシビルはRNAウィルスを直接殺すという働きは無く、あくまでも増殖を食い止め、その間にヒトの免疫力が回復してくれるのを待つ薬だったのです。
新型コロナウィルスに対する効果
アメリカの研究機関が主導した、レムデシビルの新型コロナウィルスに対する臨床試験の結果が4月29日に発表されています。
重症の新型コロナウィルス感染症患者の約1000人に対する臨床試験でした。
その方法は、まず患者を無作為に2つのグループに別けます。
一方のグループには、実際にレムデシビルを投与し、もう一方のグループは対照群としてプラシーボ(生理的食塩水などの偽薬)を投与します。
試験終了までは患者や薬を投与した医者も、患者がどちらのグループに属していたのかを知らされません。
それを知っているのはコントローラーと呼ばれる、トップの人たちのみなので、試験中の患者のデータを客観的に分析することが出来ます。
その結果、回復までの期間はレムデシビル群で11日、対照群で15日となりました。
患者の死亡率は、レムデシビル群で8.0%、対照群で11.6%という結果でした。
数字だけ見ると、明らかにレムデシビルの効果があるように思いますよね。
ところが、統計学的な判断において、回復までの期間に関しては、有意差を認めたものの、死亡率に関しては、有意差が認められませんでした。
つまり、「重症の新型コロナウィルス感染症患者の中でも、回復できる人にとっては、その期間を短くする効果がありますが、死亡する人を回復させるほどの効果は無い」ということです。
レムデシビルには、それほど大きな効果を期待は出来ませんが、重症の新型コロナウィルス感染症患者の入院期間は短くなりますよね。
それによって、医療崩壊を防ぐ一助となります。
副作用
まだ臨床試験段階だったために、起こりうる副作用や、その頻度は明確にはされていません。
しかし、臨床実験の段階では、肝機能障害、下痢、皮疹、腎機能障害などの頻度が多く報告されました。
重篤な副作用としては、多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧が報告されています。
様々な副作用を鑑み、新型コロナウィルス感染症患者の重症度に応じた、慎重な投与が重要になりますね。
日本でのレムデシビルの認可
日本では5月7日に異例の速さで、レムデシビルが特例承認されました。
普通は日本での新薬が認可されるまでには、約1年必要だとされています。
しかし、以下の2点の条件を満たしたことで、特例承認されることになりました。
① 国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある疾病が蔓延し、緊急に使用する必要がある。
② 日本と同等の審査水準がある外国で承認されている。
今回の日本における新型コロナウィルスの感染状況は、①の条件を完全に満たしていますよね。
そして、条件の②に関しては、アメリカの米食品医薬品局(FDA)で5月1日に、重症患者に対して緊急的に使用が認められました。
それを受けて、日本でも2010年の新型インフルエンザワクチン以来、史上2回目となる特例承認制度の適用となったのです。
とはいえ、FDAの緊急時使用許可は正式な認可ではないため、今後の臨床試験の結果を提出する必要があります。
そこには、世界での臨床試験の結果も含まれており、日本でも国立国際医療研究センターなどで臨床試験が行われます。
レムデシビルの供給量
レムデシビルを日本で使用できることになりましたが、その供給量によっては、実際の使用までには、まだまだ時間がかかってしまいますよね。
要は、レムデシビルを供給する「ギリアド・サイエンシズ社」次第ということになります。
しかし同社は、すでに世界で14万人分のレムデシビルを臨床試験用に無償提供することを発表しています。
そして、2020年10月までには、50万人分の生産量を確保することを目標にすると説明しました。
そのうちの何人分が日本へ供給されることは公表されていませんが、本当にごく限られた量となることは間違いありません。
日本では当面の間、政府が供給量を管理し、全国の医療機関への配分を調整する予定となっています。
レムデシビルの投与は、基本的には重症者に投与されるため、一刻も早い供給を待つしかありませんね。
その間にも他の新薬の認可が早まることを期待しましょう。
おわりに
日本では、幸いにして、新型コロナウィルスによる死亡者が、世界と比べると非常に少なく収まっています。
そして、感染も収束に向かいつつあるため、日本の状況よりもさらにひどい国へのレムデシビルの供給が優先されるのかもしれませんね。
しかし今後も、感染の第2波、第3波が必ず訪れるということが指摘されています。
もしそうなった場合には、アビガンなどを含めた10種類近い新型コロナウィルスの治療薬の候補も、実際に使えるような体制を整えて欲しいですよね。
レムデシビルに関しては、それまでのつなぎとして、慎重に使用してもらいたいと思います。
とりあえずは、レムデシビルが特例承認されたことで、今後の希望にもつながったのではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
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